「少女はみたり~ 野中のおハナ~♪」
久しぶりに晴れた海の上。にゃあにゃあとウミネコが空を舞うのは、もう陸がだいぶ近い証拠だろうか。
「清らに咲ける~ その色めでつ~♪」
まぶしく輝く波を割って船は進む。日の光を反射している細かな流氷が船にあたるたび、コン……コン……というリズムが響く。それに合わせるかのように甲板で歌を口ずさんでいた少女は、
「――あっ」
という言葉と共に柵から身を乗り出し、かすかに見えた水平線の向こう、白い屋根の町並みを見て言った。
「見えたっ。あれが……都(みやこ)!」